生理前の吐き気や頭痛の原因と対策、症状を抑えるにはどうしたらいい?
生理前に現れる症状は人それぞれですが、とくによく効かれるのが吐き気です。
常に胸がムカムカして気分がすぐれなかったり、吐き気のせいで食べる気が起こらないなど、とても辛い症状なのは間違いありません。
なぜ生理前には吐き気を訴える女性が多いのでしょうか。
実はこれらの症状は体が「乗り物酔いの状態」になっているのです。
ええ!「酔っている」ってどういうことなの?と思われるかもしれませんが、これはあるホルモンの働きによって、引き起こされます。
今回はそのメカニズムや症状改善のポイント、さらに予防法や食べ物、お薬などの情報までお伝えいたします。
目次
- 生理前の吐き気の原因、どうして起こるのか?
- 吐き気と共に起きやすい症状もチェック
- 妊娠時の「つわり」と「吐き気」の違いの見分け方
- 正しい基礎体温の測り方と見方
- 生理前の吐き気対策
- 吐き気を解消するお薬について
生理前の吐き気の原因、どうして起こるのか?
生理前の吐き気の原因は女性と関わりの深い性ホルモンのなかでも「プロスタグランジン」によることがわかっています。
生理周期に子宮が収縮するという現象がありますが、その目的は排卵に合わせて出される経血をスムーズに外へ排出することにあります。
このホルモンには女性の体のバイオリズムにとって色々な働きがありますが、生理前に分泌量が増えるためいつも以上にその影響を受けやすくなるのです。
・吐き気が起こる仕組み
それではなぜプロスタグランジンの分泌量が多いと吐き気を催してしまうのでしょうか。
このホルモンは本来、子宮を収縮させるのが主な目的です。しかし、子宮周辺の臓器にまで影響を及ぼしてしまうというデメリットがあります。
膣を通して経血を排出しやすくするというのは素晴らしい働きなのですが、子宮の周りにある胃や小腸、大腸といった消化器官を中心とした臓器まで収縮させて刺激を与えるため、どうしても吐き気が生まれてしまうのです。
・女性ホルモン、プロスタグランジンの働き
良い効果も悪い効果も生んでしまうこの物質とは、いったいどのようなものなのでしょうか。
プロスタグランジンは女性ホルモンの一種でさまざまな役割が確認されています。
実は人体の隅々にまで存在していて生命の維持とは切っても切れない大切な物質です。
とくに重要な作用としては
- 血圧を適正に下げる効果
- 筋肉を収縮させる効果
- 黄体退行作用=生理で受精しない場合、卵巣から自然に消滅して妊娠可能な状態を解除してくれる効果
があります。また、全身の血流に関わる血管を拡張させる効果もあります。
このように女性の体を守ってくれているプロスタグランジンは生理周期によって分泌量が変動します。
経血を押し出すポンプの役割
とくに分泌量が多くなるのは生理前です。プロスタグランジンは子宮の内膜から分泌されて子宮収縮を促進します。
例えば、スポイトの水を排出するとき、ポンプの部分を指で押して収縮させると中の水がスムーズに出て行きます。
これと同じようにプロスタグランジンが子宮を収縮させれば内部にある経血が膣を通してスムーズに排出されやすくなるのです。
過剰に分泌されると乗り物酔いの感覚に
このホルモンが分泌されるタイミングには生理前とともに陣痛時があります。
産婦人科では、陣痛促進のためプロスタグランジン製剤が使われることがありますが、子宮を収縮させて分娩をスムーズにさせるのが目的です。
このように子宮を収縮させるという作用を持つプロスタグランジンは本来女性の体を守り、妊娠・出産という命の誕生に深く関わっている女性ホルモンであることがわかります。
ただし、過剰に分泌されると子宮収縮作用が強すぎて内臓への刺激から吐き気をはじめ頭痛や全身のだるさ、腰痛など典型的な生理痛の症状を生んでしまうのです。
この状態では、常に内臓諸器官が刺激を受けている状態なので、さながら乗り物酔いになったような感覚に近いともいえます。
バスや電車に酔うと頭痛やだるさだけでなく吐き気も催しますが、プロスタグランジンは女性の生理前にこうした症状を自然に引き起こしてしまうのです。
・プロスタグランジンの分泌を抑えるには
プロスタグランジンの分泌量をコントロールすることが吐き気の改善にもつながります。
気軽にできる方法としてライフスタイル全般を見直すことがまず大切です。
とくに大切と言われているのが食生活の改善と血行促進です。
食べ物の中にはプロスタグランジンの働きを和らげて子宮収縮を緩める効果を持つものがあります。
生理周期を見ながら普段より多めに食べることでプロスタグランジンの分泌量を食べ物から自然なかたちで抑制する効果が期待できます。
また、日常的な運動や体の保温に努めて血行を促進することも大切です。
女性ホルモンによる影響で吐き気を始めとした生理痛に悩む女性の多くは、冷え症であると言われています。
血流障害である冷え症の状態のまま生理前に突入すると、必要以上にプロスタグランジンが分泌された経血を出そう出そうとしてしまいます。
最近は冷えとり健康法を取り入れる女性も増えていて、体を温めることで女性特有のさまざまな不快症状が軽減されることがわかっています。
東洋医学の観点からも頭寒足熱を守って冷え症の対処をすることはとても大切です。
冷え症の緩和とともに生理前の吐き気が軽くなったという声もありますので、血行改善には力を入れましょう。
吐き気と共に起きやすい症状もチェック
・下腹部の痛み
プロスタグランジンによる子宮収縮作用によるものです。下腹部にキリキリとした鋭い痛みやお腹が押されるような鈍痛を感じるケースもあります。
プロスタグランジンには筋肉を収縮させる作用のほか、痛みを脳に伝えるという伝達物質の役割もあります。
人一倍、プロスタグランジンの分泌が多い人は子宮全体の痛みを敏感に感じやすくなります。
・頭痛やめまい
女性に多いといわれる偏頭痛をはじめ生理前の頭痛もプロスタグランジンによって引き起こされる代表的な症状です。
こめかみ周辺がズキズキと痛むような場合、プロスタグランジンが原因物質です。
血管拡張作用のほか痛みを伝達したり発熱することにより体の恒常性を保とうとするホルモンなだけに頭に症状が現れると頭痛になるのです。
・月経前症候群
PMSと呼ばれる月経前症候群も女性ホルモンが原因によるものです。
下腹部痛や頭痛、吐き気のほかイライラや憂鬱、便秘や全身のむくみをはじめ腰のだるさや痛みが主な症状です。
症状の度合いには個人差があり、人によっては日常生活に支障が出て横になっていないといけないぐらいの重度なケースもあります。仕事や人間関係に影響が出て社会的な生活にマイナスとなる場合もあります。
妊娠時の「つわり」と「吐き気」の違いの見分け方
生理前だけでなく妊娠時にも分泌が盛んになるのがプロスタグランジンの特徴です。
反対に考えれば、妊娠初期の症状として有名なつわりも原因が同じなだけによく似ている症状が現れます。
吐き気やだるさ、頭痛など生理前の吐き気にまつわる症状ととても似ており、自覚症状だけで違いを見分けるのはかなり困難だといえます。
こうしたときに役立つのが基礎体温です。日頃から基礎体温をつけておけば、生理前の吐き気なのか妊娠によるつわりの影響なのかが確認できます。
妊娠初期であれば基礎体温も高温期に入っていて生理も来ないため、つわりである可能性が濃厚というわけです。
パートナーとの性交渉がある人は、できるだけ基礎体温を付けておきましょう。
そうすれば、生理前の症状として吐き気を片付けることなく、妊娠との関係を知る手がかりにもなるからです。
正しい基礎体温の測り方と見方
生理前の吐き気と妊娠のつわりを見分ける際、もっとも有効なのが基礎体温です。
妊娠の話題が出るときセットで語られることの多い基礎体温について基本的なことを学んでおきましょう。
そもそも基礎体温とは何でしょうか。基礎体温とは、朝、目覚めた直後に測る体温をいいます。
布団から出ないで就寝中の安静な状態を保ったまま測った体温のことです。男性の場合は毎日基礎体温を付けていても病気などは別として一定しています。
一方、女性の基礎体温は低温期、排卵期、高温期と大きく分けて3つの周期によって微妙に変化しています。
こうした体温のリズムを司っているのが排卵や月経など女性の妊娠能力に関わる身体機能です。
基礎体温の正しい測り方は寝起きにできるだけ体を動かすことなく検温することです。
基礎体温は舌下で測れるタイプの婦人用体温計を使用します。少しでも動作が少なくて済むよう、枕元の手の届く場所に体温計を置いておき、目覚めてすぐに測ります。
なお、体温も時間と共に変動します。今日は朝6時に測って、明日は8時に測る、というのでは正確な基礎体温が付けづらくなります。
基礎体温の測定は起床時間も合わせるようにしましょう。
測った体温は基礎体温表に記入していきます。カレンダーに書いても良いのですが、基礎体温は折れ線グラフにすることで全体の変化が見えやすくなります。
目盛りの印刷されている基礎体温表であれば毎日の体温を線で結ぶだけで周期性を一目で確認できます。
なお、基礎体温の変動リズムは約28日周期です。低温期は14日程度、排卵期は1日程度、そして高温期は13日程度続きます。
基礎体温表を見れば、自分の生理リズムだけでなく妊娠しているかどうかもすぐに見分けることができます。
生理前の吐き気対策
生理前の吐き気は日常生活の習慣を通して軽減させることができます。とくに食生活や運動習慣をはじめ普段のセルフケアでうまく乗り切ることが大切です。
・吐き気を改善する食べ物やビタミン
1)ビタミンE
ごまやアーモンドといったナッツ類をはじめ、かぼちゃやアボガド、オリーブオイルなどに豊富に含まれるビタミンです。
血行促進作用やホルモン分泌作用があるため吐き気の原因であるプロスタグランジンの影響を抑えることができます。
とくに血流が停滞して冷えが続くと吐き気を感じやすくなります。ビタミンEを積極的に摂取することで血行を促進するようにします。
2)イソフラボン
豆乳や豆腐といった大豆製品が女性ホルモンに似た働きをすることが広く知られるようになりました。
大豆イソフラボンはエストロゲンという女性ホルモンの一種と似た作業が確認されています。女性のホルモン分泌を整えることでプロスタグランジンの作用を抑制することが期待できます。
大豆から出来た食べ物は他にも納豆やきなこ、厚揚げやがんもどきなど種類が多く、料理への応用もしやすいのがメリットです。
3)鉄分
女性によく見られる病気として貧血があります。レバーやホウレンソウ、ひじきやプルーンのほか高野豆腐や切り干し大根などに豊富に含まれています。
健康な血液を作るために大切な鉄分は血の巡りを生み出すベースになる成分です。
また、憂鬱な気分を抑えるセロトニンという脳内物質を作るお手伝いもするので、生理になるとイライラや憂鬱感が強い人にはおすすめです。
・吐き気が起きた時の対処や予防法
冷え症のように体温が低いままではプロスタグランジンの分泌量が増えるため吐き気を催しやすくなります。
日頃から出来るだけ運動習慣を身につけたり、半身浴や下半身の保温に努めて体温をアップするようにします。
冷え症の改善ために女性向けの漢方薬や薬膳酒を試したり、ツボやリンパマッサージを取り入れるのもおすすめです。
また、ツボの中にはすぐによく効く吐き気止めのツボもあります。よく知られているのが内関といって手首の内側にあるツボです。
手首の横じわから指3本分の腕の中央にあるのが内関です。吐き気が収まらないとき、手元に鎮痛薬などがないときにぜひ試してください。
吐き気を解消するお薬について
生理前の吐き気が毎回辛い人や、症状が重い人は婦人科で薬を処方してもらうのも良いでしょう。
プロスタグランジンの分泌を抑制する薬としてよく使われるのはイブプロフェンやエテンザミド、アスピリンをはじめロキソプロフェンナトリウム水和物など鎮痛剤にはよく使われる成分です。
このうち、ロキソプロフェンナトリウム水和物はロキソニンという商品名で発売されています。効果が強力なため医師による処方が必要だったり、薬局でも薬剤師との対面販売がルールとなっています。
このほか婦人向けの漢方薬として生理痛や吐き気に使用される桂枝茯苓丸や当帰芍薬散など体質や症状に合わせて選ぶこともできます。
いずれにしても医師や薬剤師と相談をして症状に応じた薬を服用することが大切です。
生理時に起こる吐き気には専用のサプリメントがおすすめ
現在生理前や期間中に起こるさまざまな症状には、専用の医薬品として天然のハーブが含まれたものやサプリメントが発売されています。
毎回、生理の度にひどい吐き気に悩まされている方は、下記に詳しく解説していますので是非ご覧になられてください。
まとめ
生理前の吐き気はプロスタグランジンという女性ホルモンによる影響だと言うことがわかりました。分泌を抑制して吐き気を軽減するためには薬以外にもさまざまな方法があります。ライフスタイルを見直しながら、上手につきあえる方法を見つけていってください。